なぜサムスンは日本メーカーの利益を上回るのか

世界不況の痛手から、ようやく立ち直りつつある日本の電機メーカーだが、そのはるか先を走っている企業がある。韓国の巨大企業・サムスン電子である。

サムスンの2009年12月期の売上高は、10兆9000億円、本業の儲けを示す営業利益は8736億円だ。

一方、ソニーパナソニック日立製作所東芝、シャープなど、電機大手9社の営業利益の合計は、6400億円(10年3月期見通し)。日本の電機大手が束になっても、サムスン1社の営業利益に届かないのである。

なぜ、サムスンはこれほどまでに強いのか。その際に必ず語られるのが、集中投資戦略だ。

将来大きく成長すると判断した分野に、サムスンは、巨額の資金と人材という経営資源を惜しげもなく投入してきた。日本企業ならば、間違いなく投資を手控える不況期であっても、まったく躊躇しない。

「優れたマーケティング力によって、消費者が求めているものを探り出し、それを具現化する優秀なマネジャーがいる。そして、これを可能にする投資判断を迅速に行うトップマネジメントの存在がある。情報収集力と意思決定の早さは、日本企業とは桁違いです」(バークレイズ・キャピタル証券民生電機担当アナリスト・藤森裕司氏)

その結果、半導体、液晶パネルで世界シェアトップ、携帯電話はノキアに次ぐ第2位。関連会社のサムスンSDIが手掛けるリチウムイオン電池の世界シェアは、10年前は1%にも満たなかった。それが、今や15%と第2位まで飛躍した。

韓国との税制面の違いを指摘する声もある。

「韓国の法人税率は、住民税を合わせても24.2%しかありません。一方の日本は40.69%で16%以上も高い。減価償却制度なども異なり、日本に比べると韓国企業は有利な面があります」(藤森氏)

輸出で稼ぐサムスンには、ウォン安もプラス材料といわれる。

「電子部品など、韓国国内に製造拠点を置くデバイス事業にとっては、たしかにウォン安のメリットがあります。しかし、液晶テレビは80%が海外生産で、市場の85%は海外です。すべての事業において、ウォン安のメリットを享受できるというわけではありません」(藤森氏)

サムスンには、もう一つ、注目すべき点がある。それは広告宣伝費の高さだ。

世界の主要な空港では、必ずといっていいほどサムスンの巨大で派手な広告を目にする。空港から市街地へ向かう高速道路沿い、繁華街、スタジアム、さらには鉄道やバスといった公共の乗り物まで、あらゆる場所で「SAMSUNG」の文字が躍っている。近年では、特にヨーロッパや中東で目立つが、アメリカ、アジア、南米諸国での圧倒的な広告量には驚かされる。

サムスンの広告宣伝費は、売上高の3%といわれています。売上高は10兆円ですから、3000億円も広告宣伝費に注ぎ込まれているわけです。パナソニックは、08年度で900億円です。業績好調時にトヨタが使った広告宣伝費でも1000億円ですから、いかにサムスンがブランドの浸透に力を入れているかがわかります」(大手広告代理店幹部)

ブランドを浸透させることで、トップシェアを奪い、多額の利益を得る。この利益を原資として、さらなる追加投資を行い、市場や生産規模を拡大する。サムスンは、トップ企業が最も効率的な生産を行い、最大の利益を稼ぐ「収穫逓増の法則」を教科書通りに実践している好例といえよう。


日本の法人税はヤバイな。ドMじゃないとやってられない。