〔焦点〕縮む日本経済、デフレ深刻化で名目GDPが18年前に逆戻り

 [東京 9日 ロイター] 9日発表された7─9月期国内総生産(GDP)2次速報で、名目GDPが470兆円に減少、リーマンショック前のピークだった2008年1─3月期から1割程度の落ち込みとなり、18年前の水準に低下したことが明らかとなった。生産水準が回復しない中、雇用をある程度維持しながら賃金抑制でカバーする日本企業の体質も影響し、デフレ深刻化によって経済規模が大きく萎縮している姿が鮮明となった。

 

 <慢性デフレ構造、賃金抑制が主因>

 

 7─9月期GDPは成長率の下方修正幅も大きかったが、さらにショックが走ったのは水準自体の低下だ。金額ベースで名目GDPをみると、470兆円となり、4─6月期からさらに5兆円程度縮小、1991年の469兆円に迫るレベルに低下した。国内需要デフレータは1次速報ですでに51年ぶりの低下幅となっていたが、2次速報でさらにマイナス幅を拡大させた。需要の落ち込みだけでなく、物価の下落が日本経済の縮小に拍車をかけている。

 

 みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、日本は慢性的なデフレ構造にあると指摘。日本の生産年齢人口の減少で国内総生産の規模が閉塞感の強い足取りとなっているとし、そこに米国過剰消費の崩壊の影響も加わり、名目GDPの厳しさが度合いを増した、と分析している。

 JPモルガン証券・チーフエコノミスト菅野雅明氏は、生産水準が未曾有の落ち込みからの回復途上にある中で、過剰雇用を抱える企業が収益を削って雇用を維持しながら賃金を抑制するという、日本特有の構造が強く影響しているとみている。米国では企業は過剰な雇用は解雇で対応し、失業対策という社会的コストは政府が受け持つ。

 日興コーディアル証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏も「賃金デフレが終息しないとデフレ脱却は難しい」と指摘する。

 

 <デフレの罠の可能性も>

 

 デフレが需要自体を萎縮させている可能性が出てきた。今回の2次速報で設備投資が悪化した背景として、デフレ状況の下で企業の期待成長率が低下した可能性があるとすれば、日本がデフレスパイラルに陥りかけているとの見方もできる。12月2日公表のロイター企業調査でも、6割の企業が販売価格の低下が業績を圧迫していると回答。業績低下がさらに賃金抑制につながるのは時間の問題との指摘もある。

 

 経済規模の縮小とデフレは、従来ならば需要回復を起点に解消するはずだが、今回は需要の落ち込みが急激で、生産の回復が緩慢であるとともに賃金抑制も長期化すると見られ、脱出には相当の時間を要しそうだ。

 

 <対症療法でデフレ脱却は困難に>

 

 このため、日銀がいくら流動性を供給しても、政府が経済対策で一時的に需要をつけても、対症療法ではデフレ脱却は難しい。

 政府は8日に09年度第2次補正予算閣議決定したが、その内容は、津村啓介内閣府政務官が説明したように「株安、あるいは円高、いわゆるドバイショックと呼ばれる構造的な問題、そのほか高水準が続く失業率、こういったいくつかのネガティブな経済事象を視野にいれながら、デフレ宣言なども含めて総合的な視野に立って策定した」と総花的な感は否めない。

 日本経済が萎縮から方向転換するためには、企業も個人も活発な支出活動を行えるような環境を整える抜本的な政策が必要となる。政府にとっても名目GDPの低下は税収減に直結する深刻な問題であり、一刻も早くデフレを解消しなければ財政規律が危うくなることは、今回の予算編成過程をみても明らかだ。

 菅野氏は「政府はまずデフレ脱却に優先順位を置くべき」と主張する。そのためには3年程度の時間をかけて、財政規律を後回しにしてでも対応すべきとしている。ただ、財政支出効果の高い「ワイズ・スペンディング」に失敗すれば、デフレ脱却もままならず、財政規律も破たんしかねない瀬戸際に来ていると指摘する。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK033795320091209


この国はどこへ向かうのか。