なぜニトリは値下げするたび、業績がよくなるのか

ニトリの好調が止まらない。2010年2月期連結決算は、売上高2861億円(前期比17.3%増)、経常利益474億円(同39.6%増)。11 期連続の過去最高益を更新した。既存店の売上高は前年度比7.4%増、客数は16.2%増となった。

客数増へと結びついたのは、08年からの4度にわたる商品の大幅値下げだ。ニトリはPB商品が売上高の約76%を占める製造小売業であり、値下げしても利益が上がるビジネスモデルが備わっている。

特筆すべきは「海外拠点」と「自前主義」の2点だ。

海外の重要拠点は、インドネシアベトナムにある自社の家具工場である。数年前まではインドネシアの工場でほぼすべてを生産していたが、現在は土地代や人件費などがさらに安いベトナムへと徐々に工場をシフトさせている。

通常、コンテナは商品別に入れられて日本の物流センターで店別に仕分けられるものだが、ニトリの場合、中国で仕分けを済ませ、コンテナには店別に商品を入れた状態で日本へ運ぶ。川上で物流加工を行うほど、トータルのコストは下がる。この仕組みがスムーズに作動し、直近の輸入比率で70%超という高い数字をはじき出している。

「自前主義」は物流においても低価格実現の鍵となっている。ニトリは今年8月に持ち株会社に移行し、傘下に物流会社を設立するが、これをコスト削減の重点政策としている。ユニクロはじめ製造小売業の多くは物流をアウトソーシングするのに対し、ニトリが物流を自前で行う理由は、輸送に関わるコストをすべて把握し、無駄をなくすためだ。

たとえば海上輸送に関わる値下げの原資には貿易、物流、用船がある。最低日数、最短距離で積荷を運べばコストは下がる。ニトリでは、どこにどの船がいるかをリアルタイムでキャッチし、最も効率のよいルートを確保している。

これは物流に限らない。あらゆる情報を自社で把握・管理することで、生産から販売まで広い範囲でコストを合理化でき、それによって市場での価格競争に圧倒的に優位なポジションを確立している。

ニトリにとって不況は追い風であり、雇用・産業の空洞化はニトリの立場を強くしている。中小のインテリアメーカーの中には、資金繰りが厳しいところも少なくない。ニトリは手形ではなく現金で決済し、優良な取引先を手元に引き寄せている。ニトリの子会社のように機能するメーカーもあるほどだ。

ニトリのライバルはGMSといえるが、その多くは合理化の余地が限定的であり、売上総利益率が改善したといっても仕入れ値を買い叩くなど「腕力」に頼っていることも多い。しかしニトリの値下げはコスト構造を合理化した結果としてのものであり、継続性がある。

「安売り企業がデフレを悪化させている」という声もあるが、安売りを非難しても仕方がない。先を読んで消費者の需要を創造するニトリは、収益を上げることで社会貢献をしているのだ。

ニトリの慧眼は、効率化が遅れていた家具業界に目をつけたことだ。業界で初めから異端児扱いされていたニトリにとって、常識や慣習を打ち破る大胆な発想と行動が取りやすかったことも功を奏したといえる。アウトサイダーは同業者から助言や情報をもらえないかわり、誰にも遮られることなくビジネスを展開できる。その結果として不況下でも好業績を維持している。

「あと3割は値を下げられる」と豪語するニトリの快進撃は、当分やむことはなさそうだ。

http://president.jp.reuters.com/article/2010/07/16/15FFBCEA-8974-11DF-9ABD-45D13E99CD51.php?rpc=110


ニトリすごいなー